re:CONNECT 2024 < Keynote Session 4 > データに関する競争政策と法務の役割 – エンジニアとの協働 –

※本記事は、ブリスコラ主催「re:CONNECT 2024 ~つながりの再発見、そして新たな事業変革へ。」(2024年12月5日開催)での 島田法律事務所 パートナー 弁護士・慶應義塾大学大学院法務研究科 教授 木村 和也 氏 のKeynote Sessionをまとめたものです。本記事の最後に、講演内容全体をご覧いただける動画もご紹介しております。ぜひご視聴ください。
データに関する競争政策と法務の役割 -エンジニアとの協働 –
データの競争と競争政策
サービスなどの「競争」を法律で考えるとき、まずは供給者と需要者の関係性を捉えることから始めるのだと木村氏は説明します。
需要者を起点とした選択が生じる場合には、供給者間の競争がある状態といえ、この競争の在り方は「競争政策」として論じられることになります。
さらに、サービスの供給者にとって仕入先が存在する場合、一般的にはこの仕入先との取引にも競争は存在します。しかし、仕入れるものがデータである場合には、データの仕入れに関して競争が存在するかどうかを明確に判断することは難しいです。公正取引委員会の職員として競争政策に従事した経験も持つ木村氏は、「データそのものの供給・取得には選択が生じないため競争は存在しない」との個人見解を示した上で、「データの競争政策は、サービスの競争と密接に関わるため国として考えざるを得ない状況にあり、実際に公正取引委員会でも取り組んでいます」と説明します。
「データの競争を直接規律するような法律は存在していません。データの競争政策の考え方としては、いろいろな切り口があるでしょうが、まずは『オープンかクローズか』を考えていくべきでしょう」(木村氏)
エンジニアと法務の協働によって企業間の共創を実現
木村氏は、データには2つの特性があるため、競争政策はオープンであるべきだと主張します。
1つは、複数の消費者が同時に消費できる「非競合性」で、データという無体財産はできるだけ多く流通したほうが経済にとって望ましいと考えられます。もう1つは、他のデータと結びつくことによって価値が飛躍的に増大する「ネットワーク効果」です。
「個人情報保護法や消費者契約法などが存在しているため、データはクローズであるべきだと誤解している法務部の方もいらっしゃいます。しかし、公正取引委員会の検討会では、経済の観点で事業者がデータをオープンに取り扱っていくことが期待されています。」(木村氏)
しかし、オープン政策の遂行には課題もあり、漏えいなどの「法令違反リスク」や、提供に対して得られる利益が少ない「提供過多リスク」が想定されます。
「こうした課題には、エンジニアによる技術的な解決が期待されます。また、法務の役割は規定や契約を作り、ルールを守れば法令違反を防げてフェアなデータ流通も実現できる状態にすることです。ここまでは『競争』の話をしてきましたが、エンジニアと法務が一緒に取り組むことによって、いろいろな企業がつながる『共創』を実現できると考えています。」(木村氏)